転職とフリーター
[編集] 増加の要因と社会構造の変化 フリーターの大量発生のきっかけとなったのはバブル経済の崩壊である。この言葉が使われ始めた1980年代後半は、日本の経済が好調だったことに加え、24時間営業のコンビニチェーンの急増や、建設ラッシュに伴う建設業界の人手不足によって、夜間勤務や肉体労働に従事する労働力が求められていた。そのため、夢を追う等によりあえて正社員として就職しなくても生活を営むことができた。 しかしその後バブル経済が崩壊し、企業の経営状態が悪化すると、正社員の採用は抑制され、低賃金かつ解雇しやすいアルバイトが、代わりの労働力として活用されるようになった。そのため、当時就職活動をしていた多くの若者は正社員になれず(就職氷河期も参照)、アルバイト等で生活せざるを得なくなった。仕事 平成18年度国民生活白書の見解[4]では、どちらかといえば企業側の要因が、フリーター増加に対しより大きな影響を及ぼしているとされる。企業はバブル崩壊後の景気低迷期に、正社員の採用を抑え、労働力を非正規雇用に置き換えることによって人件費削減を図った。また、正社員についても、新卒よりも訓練する必要が無く、即戦力となる中途採用を増やす動きがあった。そのため、正規雇用での採用を希望していた若者の多くが、新卒時に正社員になることができなかった。また、産業構造の変化等により、業種ごとの求人数が変化し、雇用のミスマッチを誘発することとなった。また、企業の採用態度が新卒一括採用に偏っているため、一度新採で正社員になれなかった者は正社員になりづらいことも指摘されている。また企業側の言い分としては学生の質が低下し、企業が求める水準まで達していないとするものがある。ほかには大学等学校が進路指導等の就職支援のフォローが十分でないことも指摘されている[2]。 転職サイト 上記白書の分析以外では若者の意識も変化しているという意見がある。若者がフリーターとなる動機として「希望する就職先に決まらなければ、就職しなくともよい」「他にやりたいことがあるから」といったものや「自分に合う仕事を見つけるためにフリーターになった」というものがある[5]。 スカウト 現代の日本では、例えばコンビニエンスストアや飲食店などのチェーン店、ガソリンスタンドなど、フリーターの受け皿となる業種が発達していることも、フリーター増加の一因となっている。 他には、一度正社員として就職したものの、適職を探す者の増加が指摘されている(1987年には425万人(若年者15-34歳(在学者を除く)の17.9%)だったのが、2004年には558万人(同22.9%)に増加した)。ただ、適職を求め離職する一方で、再就職は厳しい状況となっている。 社会学者パオロ・マッツァリーノは著書『反社会学講座』ちくま文庫において、1973年のオイルショックの際にも労働市場は緊縮し、学生の就職難現象が発生したことから、フリーターはそのころから発生していたとする。マッツァリーノはさらに現在の日本経済は構造上、フリーター層に依存しており、彼らなしには企業経営は成立しにくいともしている。 看護師 求人 また「無責任」とか「税金を払ってない」などといったフリーター層への非難はいずれも事実に反しているとし、不祥事を起こしているのはフリーターではなくむしろ正社員であるとか、ヤクザの脱税の方が問題であるとしている[6]。 他にも経済思想家の日下公人は『あと三年で、世界は江戸になる』ビジネス社において、フリーター・ニートは江戸時代でいえば「風流人」であるとし、彼らは労働によって時間を奪われるよりも人生の充実を優先しているとしている。 いずれにしてもフリーター層増加のきっかけはバブル経済破綻と構造不況、それにともなう労働市場の緊縮によって、若年層が労働意欲をそがれ、かつ旧来の労働市場に魅力を感じなくなったことが大きい。他の構造的要因としては、大量消費社会の成熟にともない、産業構造が変容し、旧来の労働倫理よりも消費生活を基軸とした価値観が成立したことが考えられる。またフリーター層の大量発生によって労働市場の可塑化がすすむとともに、例えば年齢を就職条件とする表記は不当な差別にあたるとして平成19年雇用対策法も改正された。とはいえ非正規労働者への不当な待遇はいまだ存在しており、 EU諸国の政策と比較すると、失業者対策、再雇用政策などの面において日本政府の対応の遅れが著しい。また、他の遠因としては日本の労働運動の性質も挙げられる。北欧などではネオ・コーポラティズムの運動などによって同一労働同一賃金の原則などが導入される一方、日本では労働運動が「正規労働者」の既得権益を保守するにとどまり、若年層等労働市場への新規参入を阻むことにもなっている[7]。 [編集] 実態に関する統計データ [編集] 定義別推移 15〜35歳までの労働力人口とフリーターの推移(単位:万人) 年\定義 労働力人口 内閣府定義 厚労省定義 1991 2,109 182 62 1993 2,171 215 79 1995 2,213 248 94 1997 2,271 313 119 1999 2,272 385 143 2001 2,275 417 159 2003 2,200 - 217 資料出所:内閣府・国民生活白書/厚生労働省・労働白書 厚労省定義の数値は2001年以前が1〜12月の平均値であり、2002年以降は毎年2月の数値のため、その前後の数値は接続しない。 厚生労働省が定義するフリーターの総人口は、1991年のバブル期には約62万人であったが、その後急増し、2003年には217万人に達した。しかしその後は緩やかに減少し、2005年の時点では201万人となっている。内閣府の定義するフリーターの総人口も同様の傾向を示している。 [編集] 年齢階級別推移 年齢別・推定人口(単位:万人) 年\年齢 15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 1992 10.5 31.0 19.7 91.0 1996 13.7 46.1 28.1 12.4 2000 19.5 62.4 46.2 20.1 2004 25.5 88.5 62.4 37.2 資料出所:内閣府・国民生活白書/厚生労働省・労働白書 [編集] 業務内容 就業形態別業務内容(単位:%) 業務内容 雇用者 うち正社員 うちパート アルバイト 責任ある仕事を任されている 77.4 81.8 65.2 新しい仕事に取り組む機会がある 51.0 53.9 43.2 職業訓練を受ける機会がある 34.1 38.0 23.3 業務を指導する立場にある 34.2 38.1 23.6 部下がいる 21.0 24.9 10.2 資料出所:平成15年版国民生活白書 フリーターは、パート・アルバイトで働いていても、正社員に比べ「責任ある仕事を任されている」「新しい仕事に取り組む機会」「職業訓練を受ける機会」の割合が低くなっている。 [編集] 労働内容 リクルートワークス研究所が実施した「非典型雇用労働者調査2001」によると、フリーターの労働時間および労働内容は、週20時間未満が10.5%、20〜40時間が37.9%、フルタイムが43.1%、フルタイムかつ正社員並みのスキルを持っているのは8.5%という結果が示されている。 [編集] 意識 現在フリーターとなっている者は、正社員となることを希望する者が非常に多い。男性の9割以上、女性の7割以上が定職に就くことを希望している。 希望する仕事の種類別構成比(2002年) 性別\希望 定職に就く 現状を維持 家庭に入る 他・無回答 男性 90.9% 8.0% 0.0% 1.1% 女性 74.1% 19.8% 5.6% 0.4% 合計 78.8% 16.6% 4.1% 0.6% 資料出所:2006年版 中小企業白書 ほかには職業能力の向上に向けた意識は、正社員に比べ低く、職業能力の向上はあまり期待できないとされる。一方で、これらの中では正社員並の仕事を任されている者もいるため、これらの層の職業能力をどう高めるかが、企業側の今後の課題として指摘されている[2]。 [編集] 社会保障制度の適用状況 雇用者は、社会保険や労働保険への加入義務があり、有給休暇、育児休業などを、労働者に与えなければならないが、実態としてフリーター(アルバイト)には、これらの制度を適正に運用しない雇用主が多く問題となっている。 [編集] 高年齢化問題 いわゆる就職氷河期に大学卒業を迎えた者がそのままフリーターであり続けていることが要因で、フリーターは高年齢化が進行しているという。特に25歳-34歳の世代を、内閣府や厚生労働省は年長フリーターと呼んでいる。 また、35歳以上の高齢フリーターも増加しているが、統計にも含まれておらず、救済措置の対象からも外れている状況にある[8]。 フリーターは一度なるとそのまま続く傾向にあり、抜け出しにくいことが、高年齢化の要因となっている。その要因としては、大半の企業が正社員の雇用として新卒一括採用を採っているために既卒者は正社員に就職する機会が少ないことと、短期のアルバイト等で培った技能や経験が職歴としてみなされず、むしろ学校を卒業してから何もしていないとみなされ、マイナス評価になることもあること、また「フリーターからの就職では長続きしない」「フリーターはトラブルを起こしやすい」といった採用側の固定観念および差別意識によって不採用になることが多いためである[9]。ヤングハローワークも「フリーターは基本的に就業経験がないとみなされる状況にある。フリーターを一から教育できる体制の企業が少ないことと、年功序列の賃金体系では同世代との待遇調整が難しいことが、年長フリーターの就職を厳しくさせている」と同様の趣旨を述べている[8]。